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にせパンどろぼうとは何者?パンどろぼうとの対決もあわせて紹介

森のパン屋の前で食パン姿のパン職人とロールパン姿の小さなリスが向き合う、温かみのある絵本風の場面 キャラクター・声優

『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』でぶどうパンを盗む相手の正体は、ロールパンをかぶったリスです。パンどろぼうに見つかって諭され、最後は木の実などをパン屋へ届けるようになります。

柴田ケイコさんによるシリーズ第2作では、かつてパンを盗んでいた主人公が、今度は盗んだ相手と向き合います。以下は正体と結末まで触れる解説です。

にせパンどろぼうの正体は?ぶどうパン事件の流れ

にせパンどろぼうの正体はリスで、森のパン屋からぶどうパンを盗みます。事件は、パン職人になったパンどろぼうが働く店で起こりました。

第1作でパンを盗んでいたパンどろぼうは、パン屋のおじさんに諭され、パンを作る側になっています。『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』は、その店に新たな盗み手が現れるところから始まる、シリーズ第2作です。KADOKAWAの書籍情報では、柴田ケイコさん作、2021年1月28日発売と記されています。

事件の順序を先に押さえておきましょう。店のぶどうパンが盗まれ、パンどろぼうは相手を捕まえるため、自分もぶどうパンをかぶって段ボールのそばに身を隠します。この変装が「かくれみのじゅつ」です。

そこで見つかる相手は、ロールパンをかぶった小さなリス。ぶどうパンにひかれて盗んでしまったリスを、パンどろぼうは諭します。そして結末では、リスは店からパンを持ち去る代わりに、木の実などを届けてパン屋に協力するようになります。

盗難、変装、正体の判明、そして行動の変化。筋をこの順に追うと、題名の「vs」が示す対決の先まで見えてきます。二人が向き合う場面は山場ですが、物語の着地点は、リスがその後どう振る舞うかに置かれています。

「にせ」という呼び名から、主人公になりすます計画があったのだろうか、と考える方もいるでしょう。ただ、ここで確認できるのは、パンをかぶって盗みをする姿が、かつてのパンどろぼうと重なることです。リスにそれ以上の企みがあったと決めつけずに読むほうが、二人の関係を正確に捉えられます。


ぶどうパンの「かくれみのじゅつ」は、なぜ印象に残る?

ぶどうパンは、盗まれる品であると同時に、犯人を待つパンどろぼうの変装にもなります。事件を起こしたものと、事件を解く手掛かりが、同じ形で画面に現れるのです。

普段のパンどろぼうを見慣れた読者にとって、ぶどうパンをかぶった姿には意外性があります。しかも、それは目立つための衣装ではありません。相手を待ち受けるために、主人公が自分の姿を変える場面です。

作者の柴田さんは「ぱんてな」のインタビューで、第2作で描きたかったものとして、このぶどうパンを使った「かくれみのじゅつ」を挙げています。最初に思い浮かんだのは、パンどろぼうがぶどうパンをかぶり、段ボールに座る絵だったそうです。

この制作の話を知ると、変装は筋を運ぶためだけに後から加えられた場面ではなく、作者が描きたいと考えた絵と物語が結びついた場面だと分かります。ぶどうパンが盗まれるから、ぶどうパン姿で待つ。そのつながりは簡明ですが、視覚的な面白さがあります。

私は、ここに絵本ならではの強みを感じます。「何が盗まれたか」を説明する言葉だけに頼らず、同じパンの形を別の役割で再び見せられるからです。最初は店の商品として見たぶどうパンを、次には主人公の姿として見る。読者の目にも、事件が続いていることが伝わります。

柴田さんは同じインタビューで、自身もぶどうパンが好きだと話し、読んだ子どもが興味を持ってくれたらうれしいとも述べています。物語の中では盗みの対象であっても、描く側には、そのパン自体への愛着がある。私はその両方があるために、追跡の場面もどこか愉快に映るのだと思います。

※画像はAIによるイメージ

パンどろぼうは、なぜリスを諭す側になれた?

第1作でパン屋のおじさんに諭された経験が、第2作の主人公の立場を変えています。パンどろぼうは以前から正しい行動を知っていた人物として登場するわけではありません。

第1作『パンどろぼう』では、おいしいパンを求めて盗みをしていた主人公が、パン屋のおじさんと出会い、パン職人になります。第2作では、その主人公が自分の働く店からパンを盗まれ、相手に向き合うことになるのです。

柴田さんも「ぱんてな」の取材で、第1作ではおじさんに優しく諭されたパンどろぼうが、第2作では教える側になると説明しています。このつながりを知ると、続編の主人公は職業だけでなく、人との接し方にも変化を求められていると分かります。

店の側に立つようになったからといって、主人公の過去が消えるわけではありません。むしろ読者は、リスを前にしたパンどろぼうに、以前のおじさんの姿と、以前のパンどろぼう自身の姿を同時に重ねられます。

私はここが、第2作を単独の犯人探しよりも興味深くしている点だと考えます。パンどろぼうは、盗まれた店の側の事情を知っています。一方で、好きなパンを目の前にしたときの衝動も、自分の過去と切り離して考えられないはずです。

もちろん、相手の気持ちを想像することと、盗みを認めることは別です。作品が示すのは、見つけて注意するだけでは終わらず、その後の行動が変わるまでを見届ける流れです。だからこそ、リスが木の実などを持ってくる結末には意味があります。

第1作から続けて読むなら、パン屋に入るときの主人公の立場を比べてみてください。かつてはパンを手に入れるために店へ向かい、今は店で作ったパンを守るために動く。同じ「パンが好き」という気持ちが、異なる行動につながっていることが見えてきます。


作者の取材と受賞歴から、作品の背景をどう読める?

柴田ケイコさんは、実際のパン屋で見聞きしたものも絵に取り入れています。空想の森の店でありながら、パンを作る道具や店先の品には、現実のパン屋との接点があります。

柴田さんは友人のパン屋で厨房を見せてもらい、第1作のパン作りの場面に、はかりやパンを切る道具を描いたと話しています。また、第2作の店先には、高知県のご当地パン「ぼうしぱん」を描きました。モデルは、その友人の店が作るリボン付きのパンだそうです。

ぼうしぱんは、にせパンどろぼうの正体を示す手掛かりではありません。それでも、筋を知ってから店先を見直す理由になります。ぶどうパンだけを追っていた最初の読書とは違い、ほかに並ぶパンや店の道具へ目を移せるからです。

ここで大切なのは、背景の話と事件の事実を混ぜないことだと思います。ぼうしぱんが描かれているのは作者の取材や好みが絵に表れた一例であり、リスが盗んだのはぶどうパンです。細部を楽しむほど、何が物語の中心なのかも確かめたくなります。

『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』は、2021年の第2回TSUTAYAえほん大賞で第1位となり、第5回未来屋えほん大賞の大賞も受賞しました。KADOKAWAが掲載した受賞時のコメントで、柴田さんは前作に続き、愉快で温かみのある話を考えたことを伝えています。

受賞歴だけで、どの場面が一人ひとりの読者に響いたかを決めることはできません。ただ、変装の笑いと、相手を諭した後の変化が一冊に収まっていることは、この作品の読み味を説明するうえで欠かせないでしょう。

未読の方が手に取るなら、書誌情報でも版を確認できます。ここで扱っているのは、柴田ケイコさん作、KADOKAWA刊、2021年1月28日発売の『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』です。結末の細かな表情や絵の配置は、絵本のページを実際にめくって確かめる楽しみとして残っています。

※画像はAIによるイメージ

考察:変装の絵と結末の絵を、どう見比べたい?

私見では、この作品の変化を最もよく示すのは、パンどろぼうがぶどうパンをかぶって待つ場面と、リスが木の実などを店へ持ってくる結末の対比です。片方では、相手に見つからないよう姿を隠します。もう片方では、リスが自分から店に関わる行動を取ります。

この二つの場面の間には、追う側と追われる側が向き合う時間があります。変装は相手を発見する方法ですが、それだけでは次の盗みを防げるとは限りません。相手が店との関わり方を変えるところまで描くことで、事件の解決が具体的になります。

私が特に面白いと感じるのは、主人公の変装にも、かつての「パンをかぶって行動するどろぼう」の面影があることです。パンをかぶるという外見上の特徴は残っていますが、今は自分の欲しいものを盗むためではなく、店で起きた問題に向き合うために使われます。

これを主人公の成長と読むのは、外見が立派に変わったからではありません。同じようにパンをかぶっていても、誰のために、何をするかが変わったからです。絵に親しんでいる読者ほど、この行動の違いに気づきやすいのではないでしょうか。

リスについても、結末の意味は「盗みをやめた」という一文だけでは尽くせません。最初は店からぶどうパンを持ち去り、最後は店へ木の実などを持ってくる。物が動く向きが変わったことによって、相手とパン屋との関係が目に見える形で示されます。

私は、この「持っていく」から「持ってくる」への転換が、第2作ならではの読みどころだと考えます。リスがパン職人になるわけではなく、自分にできることで店に関わる。その結末には、主人公の経験をそのまま繰り返さず、別の形で受け取る余地があります。

題名には「vs」とありますが、勝敗だけに目を向けると、最後の行動の小さな変化を見落としかねません。対決があるから二人は出会い、出会った後に、以前とは違う関係を始める。私はその順序に、この物語の温かさを感じます。

読み返す際は、まずぶどうパン姿の主人公が段ボールのそばで相手を待つ様子を見て、次にリスが店へ持ってくるものを見てみてください。隠れて相手を探す絵から、自分の意思で店へ向かう結末へ。説明を増やさなくても、行動の変化を絵に沿って確かめられます。

『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』のにせパンどろぼうは、ぶどうパンを盗んだロールパン姿のリスです。パンどろぼうの「かくれみのじゅつ」で見つかり、諭された後は木の実などを届けるようになります。第1作で教わった主人公が、今度は相手に向き合う。その歩みを、ぶどうパンをめぐる愉快な絵とともに味わえる続編です。


よくある質問

『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』はシリーズの何作目ですか?

柴田ケイコさんによる「パンどろぼう」シリーズの第2作です。2021年1月28日に発売されました。

「かくれみのじゅつ」は誰が使いますか?

パンどろぼうが使います。ぶどうパンをかぶり、段ボールのそばに身を隠して盗んだ相手を待つ場面です。

第1作を読んでいなくても内容は分かりますか?

ぶどうパンが盗まれる事件は、第2作の中で追えます。先に第1作を読むと、パン職人になった主人公がリスを諭す場面の背景も分かりやすくなります。

篠原千鶴