『薬屋のひとりごと』の漫画は2種類あり、どちらも日向夏さんの原作小説を描く正式なコミカライズです。謎解きや物語の進行を重視するならサンデーGX版、人物の表情や演出を味わいたいならビッグガンガン版が選びやすいでしょう。
2026年9月14日時点の最新巻は、サンデーGX版が22巻、ビッグガンガン版が17巻です。この記事では「なぜ2種類あるのか」「どちらが先まで進んでいるのか」「人気はどちらか」「結局どちらを読むべきか」を、公式情報と筆者の読書上の評価を分けながら整理します。
『薬屋のひとりごと』の漫画はなぜ2種類ある?
結論から言うと、小学館とスクウェア・エニックスから、それぞれ別の制作陣によるコミカライズが刊行されているためです。どちらかが続編、外伝、廉価版という関係ではありません。
スクウェア・エニックスの月刊「ビッグガンガン」で連載されているのは、タイトルがそのまま『薬屋のひとりごと』となっている作品です。
原作は日向夏さん、作画はねこクラゲさん、構成は七緒一綺さん、キャラクター原案はしのとうこさん。スクウェア・エニックス公式では2026年7月24日発売の第17巻まで確認できます。
一方、小学館の月刊「サンデーGX」で展開されているのが、『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』です。
こちらは原作・日向夏さん、作画・倉田三ノ路さん、キャラクター原案・しのとうこさんという制作体制。小学館公式では2026年6月18日に第22巻が発売されています。
両作品の第1巻発売日を並べると、さらに関係が分かりやすくなります。
- ビッグガンガン版『薬屋のひとりごと』第1巻:2017年9月25日
- サンデーGX版『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』第1巻:2018年2月19日
公式書誌でも、それぞれの発売日を確認できます。
つまり、片方が何年も先行し、その成功を受けて生まれた後発作品というほど大きく時期が離れているわけではありません。比較的近い時期から、二つの出版社で同じ原作の漫画化が展開されてきたことになります。
ただし、「なぜ二種類のコミカライズを並行して展開することになったのか」について、出版社側が理由を一つに定めて説明した公式資料は、2026年9月14日時点で筆者が確認した範囲では見当たりません。
そのため、「読者層を意図的に分けた」「一方のヒットを受けてもう一方が企画された」といった説明を、確定した事実として扱うのは避けるべきでしょう。
重要なのは、二作品とも同じ原作を出発点にしながら、漫画としての見せ方が異なっていることです。
『薬屋のひとりごと』は、薬学や毒の知識を用いた謎解きと、猫猫や壬氏を中心とする人間関係の物語が密接に重なっています。同じ材料から、どの要素を画面の前面へ出すか。その違いが二つの漫画の個性になっていると私は考えています。
サンデーGX版とビッグガンガン版の違いは?最新巻まで比較
2026年9月14日時点で最も実用的な違いは、刊行巻数と原作の進行度、そして漫画としての読み味です。
基本情報を整理すると、次のようになります。
比較項目 サンデーGX版 ビッグガンガン版
正式タイトル 『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』 『薬屋のひとりごと』
出版社 小学館 スクウェア・エニックス
掲載誌 月刊サンデーGX 月刊ビッグガンガン
作画 倉田三ノ路 ねこクラゲ
構成 ― 七緒一綺
原作 日向夏 日向夏
キャラクター原案 しのとうこ しのとうこ
最新巻 22巻 17巻
最新巻発売日 2026年6月18日 2026年7月24日
紙版最新巻の定価 770円(税込) 770円(税込)
判型 B6判 B6判
原作進行 原作5巻相当の展開へ※筆者照合 原作4巻クライマックスまで※公式明記
読み味 謎解き・因果関係を追いやすい※筆者評価 表情・人物関係を味わいやすい※筆者評価
最新巻の発売日、価格、判型は各出版社の公式書誌で確認できます。サンデーGX版22巻は180ページ、ビッグガンガン版17巻は770円・B6判で刊行されています。
ここで注意したいのは、22巻対17巻という数字だけで作品量や優劣を判断できないことです。
一つの事件を何話に分けるか、説明を台詞として残すか、表情や無言のコマに置き換えるかによって、同じ原作を漫画化しても必要な巻数は変わります。
進行については、ビッグガンガン版17巻は公式が「『砦編』完結、原作小説第4巻のクライマックスを収録」と明記しています。
一方、サンデーGX版22巻では、子の一族をめぐる出来事の後、猫猫が羅半とともに「仙女」の噂を追い、皇弟として人前に立つようになった壬氏から文が届く展開が紹介されています。
原作小説の流れと照らすと、これは第5巻相当の領域に入ったと判断できます。ただし、出版社が「22巻=原作第5巻」と明示しているわけではないため、本記事では公式あらすじ同士を照合した筆者判断として扱います。
したがって、2026年9月時点で「漫画だけで少しでも先の物語を読みたい」という条件なら、サンデーGX版が選びやすいでしょう。
具体的に何が違う?同じ「園遊会」を見ると読み味が分かる
「サンデーGX版は謎解き寄り、ビッグガンガン版は人物描写寄り」と言うだけでは抽象的です。そこで、両作品に共通する初期の重要エピソード「園遊会」を手掛かりに違いを見てみましょう。
園遊会は、猫猫が玉葉妃の毒見役として参加し、料理に潜む異変を察知する重要な場面です。
サンデーGX版では、公式配信上でも「第六話 園遊会 前編」として早い段階から独立したエピソード名で整理されています。第2巻の紹介文も、皇帝の御子をめぐる問題を解決した猫猫が玉葉妃の侍女となり、園遊会で毒見をする流れを前面に出しています。
私はこの版を読むとき、猫猫が何を見て、どの情報を危険と判断したのかを比較的追いやすいと感じます。
料理そのもの、毒見役としての立場、周囲の反応といった複数の情報が「事件を解くための材料」として連なって見えやすいからです。これは筆者の読書上の評価であり、公式が二作品の演出方針をこのように分類しているわけではありません。
一方、ビッグガンガン版でも園遊会は第2巻前後の重要エピソードですが、公式配信では「園遊会(その2)」など、場面を細かく区切りながら展開されています。スクウェア・エニックスは後年、第13巻特装版に園遊会エピソードの七緒一綺さんによるネームとコメンタリーを収録しており、同場面が漫画構成の見せ方を振り返る題材にも選ばれています。
ビッグガンガン版を読んでいて私が印象に残るのは、猫猫の反応だけでなく、彼女を見る周囲の人物まで含めた場の空気です。
毒や料理という「問題」を解くことに加え、猫猫の行動が周囲からどう見えるか、そこから壬氏たちの関係がどう揺れるかを視覚的に楽しみやすい。園遊会は、両版の方向性を見比べるのに適した場面だと思います。

もう一つ分かりやすいのが、物語の出発点である皇帝の御子たちの体調不良です。
小学館版第1巻の公式紹介は、この出来事を猫猫が薬屋の知識によって調べ始める「異色ミステリー」として強く押し出しています。また第2巻の紹介では、原因を鉛白と突き止めた後の物語へ進むことが明示されています。
ビッグガンガン版第1巻も同じ事件から始まりますが、公式紹介では「持ち前の好奇心と知識欲に突き動かされる猫猫」という主人公像そのものを前面に置いています。
紹介文だけで漫画表現のすべてを決めることはできませんが、実際に両版を読むと、この違いは興味深く重なります。
サンデーGX版では「手掛かりがどのように答えへつながるか」を意識しやすく、ビッグガンガン版では「その状況で人物がどう反応するか」へ自然と目が向く。
校正の仕事で文章の順序や伏線を見る立場からすると、この情報の入口の違いが、同じ原作なのに読後感を変える大きな要因だと感じます。
『薬屋のひとりごと』漫画はどっちが人気?
2026年9月14日時点で、二つのコミックス単独を同一時点・同一基準で比較できる公式発行部数は確認できません。
そのため、「現在はサンデー版のほうが何百万部多い」「ビッグガンガン版が圧倒的に売れている」といった順位を、確かな数字として示すことはできません。
ただし、人気を判断する材料はあります。
ビッグガンガン版『薬屋のひとりごと』は、「次にくるマンガ大賞2019」のコミックス部門で第1位を獲得しました。公式記録では30,311ポイントです。
これはビッグガンガン版が、アニメ放送以前から漫画読者に強く支持されていたことを示す客観的な実績の一つでしょう。
一方で、現在の『薬屋のひとりごと』人気を一方のコミカライズだけで説明することも難しくなっています。
原作元のイマジカインフォスは2026年8月15日、全世界シリーズ累計5,700万部突破を発表しました。16言語の海外翻訳版も合算した数字で、ヒーロー文庫公式サイトにも5,700万部突破と掲示されています。
ここで重要なのは、「シリーズ累計」と「各コミカライズ単独の発行部数」を混同しないことです。
原作小説、二つの漫画、海外版、さらにアニメを入口として広がった現在の人気は、シリーズ全体の相乗効果として見るほうが実態に近いでしょう。
過去の明確な受賞実績ならビッグガンガン版。現在どちらの漫画が単独で上かは、公式数字だけでは順位付けできない。
これが2026年9月時点で最も誤解の少ない答えです。
結局どっちがおすすめ?最新巻と読み方で選ぶ
初めて『薬屋のひとりごと』の漫画を買うなら、「どちらが有名か」よりも自分が何を楽しみたいかで選ぶのが合理的です。
- 謎の因果関係や伏線を整理しながら読みたい → サンデーGX版
- 2026年時点で漫画をより先まで読みたい → サンデーGX版
- 猫猫や壬氏の表情や人物同士の距離を味わいたい → ビッグガンガン版
- 場面の華やかさやコミカルな反応を楽しみたい → ビッグガンガン版
- 同じ原作が漫画化でどう変わるか知りたい → 両方
サンデーGX版第22巻とビッグガンガン版第17巻は、紙の通常版ならどちらも定価770円(税込)、B6判です。
ですから、少なくとも最新通常巻同士では「価格が安いほうを選ぶ」という差はありません。電子版の価格やキャンペーンは書店ごとに変動するため、購入時には利用する電子書店の最新表示を確認してください。

アニメから入った方にも、一つ注意したい点があります。
「アニメの続きだけを最短で読みたい」と考える場合でも、二つの漫画では同じ原作を消化する巻数が異なるため、漫画の巻数だけで対応箇所を決めないほうが安全です。
2026年9月時点では、ビッグガンガン版17巻が原作第4巻のクライマックスまでであることは公式に確認できます。一方、サンデーGX版は公式あらすじを原作と照合すると第5巻相当へ進んでいます。
アニメで筋を知っていても、漫画独自の構成や表情を楽しみたいなら、第1巻から読む価値は十分にあります。
むしろ一度アニメで内容を知った後だからこそ、「この手掛かりを漫画ではいつ見せるのか」「猫猫の表情をどう描くのか」と、媒体による演出の違いを落ち着いて味わえるでしょう。
考察|二つの漫画は「因果関係」の見え方が違う
ここからは筆者の私見です。
二つの『薬屋のひとりごと』を読み比べる最大の面白さは、単に絵柄が違うことではありません。同じ事件の中で、読者がどの因果関係に先に気づくかが変わることにあると考えています。
猫猫が扱う謎には、大きく二種類の因果があります。
一つは、薬、毒、食事、化粧品、体調、生活環境といった物質や現象を結ぶ因果です。
もう一つは、誰かが秘密を守る、嘘をつく、立場を隠す、大切な人を守ろうとするといった、人の感情と行動を結ぶ因果です。
サンデーGX版では、私には前者の線が比較的追いやすく見えます。
小学館自身も第1巻の紹介で「異色ミステリー」と打ち出し、第2巻では猫猫が皇帝の御子の不調の原因を突き止めたことを明確に整理しています。
猫猫が「何を知っているから、この異変に気づけたのか」を確認しながら読むと、伏線の配置が見えやすい。
一方、ビッグガンガン版では、人物の感情と行動がつながる瞬間に目が向きやすいと感じます。
猫猫は感情を大げさに言葉へ出す人物ではありません。それでも、薬や毒へ興味を示した瞬間、壬氏を警戒したとき、誰かの事情を察したときには、表情や姿勢の変化があります。
壬氏もまた、外向きの完璧な振る舞いと、猫猫を相手にしたときの反応の落差が魅力の人物です。
こうした「台詞だけでは完結しない情報」は漫画との相性がよく、ビッグガンガン版では特に味わいどころになっていると私は考えます。
ただし、これは「サンデーGX版には人物描写がない」「ビッグガンガン版は謎解きが弱い」という意味ではありません。
どちらにも謎解きと人物劇があります。
違うのは、読者の視線を最初にどこへ導くかです。
小説では原則として文章を上から順に読みます。しかし漫画では、ページを開いた瞬間に人物の顔、背景、吹き出し、手に持つ物、視線の方向など複数の情報が同時に入ります。
つまりコミカライズでは、何を描くかだけでなく、何を先に見せるかが解釈になるのです。
校正者として文章を読むときも、同じ情報であっても置く順番が変われば受け取られ方が変わります。
結論の前に伏線を置けば読者は推理できますし、感情を先に示せば後の台詞の意味が変わります。
『薬屋のひとりごと』の二種類の漫画は、その差を非常に分かりやすく味わえる例だと思います。
以前の記事では、この関係を「骨格と体温」「二枚のレンズ」など複数の比喩で説明していましたが、より簡潔に言えば、サンデーGX版は“事件の理由”を追う楽しさ、ビッグガンガン版は“人がそう動いた理由”を感じる楽しさが前に出やすい、というのが私の評価です。
だからこそ、一方を読んだからもう一方は不要、とはなりにくいのでしょう。
事件の結末を知った後に別版を読むと、「答え」より「見せ方」に意識を向けられます。
これはミステリー作品として、かなり贅沢な読み方です。
まとめ|『薬屋のひとりごと』漫画2種類は好みと進行度で選ぶ
『薬屋のひとりごと』の漫画は、小学館のサンデーGX版『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』と、スクウェア・エニックスのビッグガンガン版『薬屋のひとりごと』の2種類です。
どちらも日向夏さんの原作小説をもとにした正式な本編コミカライズで、続編と前編、あるいは本編とスピンオフという関係ではありません。
2026年9月14日時点では、サンデーGX版が22巻、ビッグガンガン版が17巻。ビッグガンガン版17巻は原作第4巻クライマックスまで、サンデーGX版22巻は公式あらすじを照合すると原作第5巻相当の展開に入っています。
謎の仕組みや物語を先へ追いたいならサンデーGX版。人物の表情や場面の演出をじっくり味わいたいならビッグガンガン版。
人気については、二作品単独を同じ条件で比較できる最新公式部数がないため、現在の順位を断定することはできません。ただしビッグガンガン版には「次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門第1位という実績があり、シリーズ全体では2026年8月に全世界累計5,700万部を突破しています。
一冊目は自分の好みで選び、作品を好きになったら同じ事件をもう一方で読む。
そうすると『薬屋のひとりごと』の二種類という特殊さは、「どちらを買えばよいか迷う理由」ではなく、同じ物語を異なる角度から読み直せる魅力に変わるはずです。
よくある質問
『薬屋のひとりごと』の漫画は本当に2種類あるのですか?
はい。
小学館の『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』と、スクウェア・エニックスの『薬屋のひとりごと』があります。どちらも日向夏さんの原作小説をコミカライズした本編です。
『薬屋のひとりごと』漫画の最新刊は何巻ですか?
2026年9月14日時点では、サンデーGX版が22巻、ビッグガンガン版が17巻です。
第22巻は2026年6月18日、第17巻は2026年7月24日に発売されました。
漫画はどっちが先まで進んでいますか?
2026年9月時点ではサンデーGX版です。
ビッグガンガン版17巻は公式に原作小説第4巻のクライマックスまでと案内されています。サンデーGX版22巻は公式あらすじと原作の流れを照合すると、第5巻相当の展開へ進んでいると判断できます。
『薬屋のひとりごと』漫画はどっちが人気ですか?
現在の二作品を同一条件で比較した最新の公式発行部数は確認できないため、順位は断定できません。
ビッグガンガン版には「次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門第1位、30,311ポイントという受賞実績があります。
アニメを見た後は漫画の何巻から読めばよいですか?
二つの漫画では原作を消化する巻数が異なるため、単純に「アニメの次は○巻」と共通の数字では示せません。
続きだけを読みたい場合は各巻の公式あらすじを確認するのが確実です。一方、漫画独自の構成や人物表現を楽しみたいなら、第1巻から読み直すと二つのコミカライズの違いが最も分かりやすくなります。
『薬屋のひとりごと 後宮異聞録』はサンデー版の別名ですか?
いいえ。少なくとも漫画の正式タイトルではありません。
小学館版の正式名称は『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』、スクウェア・エニックス版は『薬屋のひとりごと』です。漫画を探す際は、この正式タイトルと作画担当者名まで確認すると取り違えにくいでしょう。
出典・確認時点
本記事の巻数、発売日、価格、判型、制作スタッフ、最新巻の内容は、小学館「小学館コミック」およびスクウェア・エニックス「ビッグガンガン」公式書誌を2026年9月14日時点で確認しています。
第1巻の発売日は、小学館版が2018年2月19日、スクウェア・エニックス版が2017年9月25日と各社公式ページで確認しています。
「サンデーGX版22巻が原作第5巻相当」という記述は出版社が巻数対応を明示した公式表現ではなく、22巻公式あらすじと原作の展開を照合した筆者判断です。一方、ビッグガンガン版17巻についてはスクウェア・エニックスが「原作小説第4巻のクライマックスを収録」と明記しています。
人気に関しては、「次にくるマンガ大賞2019」公式の歴代受賞作品ページと、イマジカインフォスが2026年8月15日に発表した「全世界シリーズ累計5,700万部突破」の情報を参照しています。
なお、本文中の「謎解き・因果関係を追いやすい」「人物の表情や感情を味わいやすい」という比較は、公式が設定した分類ではなく、両作品を読んだ筆者の評価です。事実情報と混同しないよう明記しました。
価格、電子版の販売条件、刊行状況は変更される可能性があります。購入時には各出版社や利用する電子書店の最新情報をご確認ください。
執筆:篠原千鶴(アニメ愛好家・フリーランス校正者)

