『氷の城壁』の美姫とヨータは、原作13巻で両想いとなり、恋人同士になります。告白は第107話、その後の第109話〜第110話で二人が新しい関係を受け止めていく流れです。
ただし、この二人の恋は「長年片思いしていたヨータが告白されて終わり」という単純なものではありません。第8巻で一度大きくすれ違ったからこそ、美姫が自分の意志でヨータを好きになり、自分から言葉にするまでの時間に大きな意味があります。
『氷の城壁』美姫とヨータは付き合う?何話で恋人になるのか
結論から言えば、安曇美姫と日野陽太(ヨータ)は最終的に付き合います。
検索すると「107話で付き合う」「109話で付き合う」「110話で正式に付き合う」といった複数の説明を見かけることがありますが、これは作品が二人の関係成立を一つの場面だけで処理していないためです。
第107話「週末 sideA」で、美姫はヨータと二人きりで出かけ、帰り道に自分の想いを伝えます。集英社による第13巻の紹介でも、美姫がヨータに告白しようと決めて二人で出かけ、帰り道で想いを伝える展開が明記されています。第13巻には第105話から第111話までが収録されています。
その後、第109話「はじまらない」、第110話「箍」へと続きます。少年ジャンプ+でも、それぞれの正式な話数とタイトルを確認できます。
流れを先に整理すると、次のようになります。
- 第71話「結び」:ヨータの恋心と美姫の認識が大きく動く
- 第107話「週末 sideA」:美姫がヨータへ想いを伝える
- 第109話「はじまらない」:告白後、両想いになった二人が戸惑う
- 第110話「箍」:互いの気持ちを改めて言葉にし、恋人として向き合う
- 第116話「次の季節へ」:交際後の二人の関係がさらに描かれる
したがって、「美姫とヨータが付き合うのは何話?」への最も誤解の少ない答えは、107話で美姫が告白し、109話〜110話で交際関係が確かなものになっていく、という説明でしょう。
「告白=即座にすべてが完成」と描かなかったことは、この二人を理解するうえでかなり重要です。
長い友人関係を持つ二人の場合、恋人という名前が付いた瞬間から、昨日までと同じように振る舞えるわけではありません。
むしろ、それまで何気なくできていたことに意味が生まれてしまう。
隣に座ること、二人で出かけること、目を合わせること。友情の中では自然だった行為が、恋人になった途端に意識の対象へ変わります。
私は、この「両想いになった後にも残る難しさ」を省略しなかった点に、『氷の城壁』らしい誠実さを感じます。
美姫とヨータはなぜ一度すれ違った?第8巻・第71話までの経緯
美姫とヨータの恋愛を理解するなら、13巻だけでなく8巻のすれ違いを押さえておく必要があります。
単行本第8巻では、美姫が「ヨータが自分のことを好きかもしれない」と意識し始めます。一方のヨータも、自分の気持ちをはっきり伝えようと決めます。
集英社による第8巻の紹介でも、美姫がヨータの好意について思い悩み、ヨータが気持ちを伝えようとする展開が示されています。第8巻には第67話「理解」から第74話「聴取―裏」までが収録され、第71話の題名は「結び」です。
ここで重要なのは、ヨータの気持ちを知ったからといって、美姫がすぐ恋愛関係を選ぶわけではないことです。
二人の流れを大きく分けると、
**ヨータが美姫を好きになる
→ 美姫がその好意に気づく
→ 美姫はすぐ同じ気持ちにはならない
→ 二人は友人として関係を続ける
→ 美姫自身の中でヨータへの感情が変化する
→ 今度は美姫から告白する**
という構造になっています。
私は、この順番が美姫とヨータの恋愛を特別なものにしていると考えています。
ヨータが長く美姫を好きだったとしても、その年月は美姫が恋人になる義務を生みません。
「ずっと好きだった人が最後には報われる」という説明だけでは、この物語が大切にしている部分を取り落としてしまいます。
ヨータの気持ちはヨータのもの。
美姫の気持ちは美姫のものです。
片方の強い好意が、もう片方の感情を自動的に決めるわけではありません。
『氷の城壁』は、そこを急いで結びつけません。
一度「友達」の場所へ戻すことで、美姫が自分の感情を自分で見つける時間を残しています。
恋愛漫画では、相手から強く思われていることが恋心を自覚する直接のきっかけになる展開も珍しくありません。
しかし美姫の場合、ヨータに好意を向けられた事実と、自分がヨータを好きになることの間に、はっきりと時間があります。
この時間があるからこそ、後の美姫の告白は「ヨータに申し訳ないから」「ずっと好きでいてくれたから」という返礼ではなく、美姫自身が選んだ答えとして読めるのです。
美姫はいつヨータを好きになった?友情から恋へ変わる過程
では、美姫は具体的にいつヨータを好きになったのでしょうか。
ここは「この一コマから恋になった」と一点で断定するより、昔から身近にいたヨータの存在を、美姫が少しずつ別の角度から見直していったと捉えるほうが作品の描写に合っています。
ヨータは、美姫にとって突然現れた恋愛対象ではありません。
もともと身近にいる人物であり、友達としての歴史があります。
だからこそ、美姫にとっては「好きか嫌いか」よりも、「この親しさは友情なのか、それ以上なのか」を見分けることのほうが難しかったのでしょう。
これは、遠くにいる憧れの相手へ近づいていく恋とは性質が異なります。
美姫とヨータは、近すぎたために恋愛として見えなかった相手を、関係が揺れたことで改めて見つめ直す恋です。
その点に、この組み合わせならではの面白さがあります。
『氷の城壁』第1巻の公式紹介でも、主要人物は「孤高の女子・小雪」「学校の人気者・美姫」「距離ナシ男子・ミナト」「のんびり優しい雰囲気のヨータ」と、それぞれ異なる対人姿勢を持つ四人として提示されています。
美姫は、その中でも特に周囲との関係を滑らかに保とうとする人物です。
人からどう見られているかに敏感で、相手が求めている自分を察することができる。
これは社交性という長所である一方、「自分は本当はどうしたいのか」が見えにくくなる危うさにもつながります。
ヨータへの感情を理解するのに時間が必要だったのも、私はこの人物像と無関係ではないと考えています。
友達として大事なのか。
恋愛対象として好きなのか。
好意を向けられたから意識しているだけなのか。
失いたくないから執着しているのか。
人間の感情は、そう簡単に一つの名前へ分類できません。
むしろ親しい相手ほど、友情と恋愛の輪郭は重なります。
「会いたい」「一緒にいたい」「自分を特別に見てほしい」という気持ちは、友情にも恋愛にも現れるものです。
だから美姫の変化を読むとき、「鈍感だから気づかなかった」と片づけてしまうのは少し惜しいように思います。
美姫には、ヨータを大切に思う気持ちがもともとあった。
その大きな感情に、後から恋愛という名前が加わっていった。
そう考えると、107話の告白は突然の方向転換ではなく、それまで散らばっていた感情に美姫自身がようやく名前を付けた場面として見えてきます。

第107話〜110話では何が起こる?美姫の告白から両想いまで
美姫とヨータの関係が決定的に動くのが、原作第13巻です。
集英社の単行本情報によると、第13巻の収録話は以下の7話です。
- 第105話「修学旅行3」
- 第106話「報・連・相」
- 第107話「週末 sideA」
- 第108話「週末 sideB」
- 第109話「はじまらない」
- 第110話「箍」
- 第111話「クリスマス」
美姫とヨータの恋愛について検索している方が特に押さえておきたいのは、第107話・第109話・第110話です。
第107話「週末 sideA」|美姫がヨータへ告白する
第107話「週末 sideA」は、少年ジャンプ+でも正式な話数として公開されています。
この回で重要なのは、美姫の側から行動することです。
以前の二人は、ヨータが美姫を好きで、美姫がその感情を受け止める側でした。
ところが13巻では、その構図が反転します。
美姫が自分の気持ちを認め、自分から二人で出かける時間をつくり、最終的に自分の言葉で想いを伝える。
これは単なる「立場の逆転」ではありません。
二人が恋人になるために必要だった対等さが、ここでようやく生まれたのだと思います。
ヨータが長く思い続けたから美姫を「手に入れた」のではなく、美姫の中にもヨータとは独立した時間の中で恋心が育った。
その二つの感情が並んだことで、初めて両想いになります。
この違いは、本作の恋愛観を読むうえで非常に重要です。
第108話「週末 sideB」|一つの出来事を一方向だけで終わらせない
続く第108話の題名は「週末 sideB」です。
「sideA」と「sideB」という構成自体が、『氷の城壁』の特徴をよく表しています。
人間関係では、同じ出来事を体験していても、二人がまったく同じ意味として受け取っているとは限りません。
言った側にとっては勇気を振り絞った一言でも、聞いた側は驚きが大きすぎてすぐ意味を整理できない。
沈黙している人が「嫌だから黙っている」とも限りません。
混乱しているのかもしれない。
言葉を探しているのかもしれない。
うれしすぎて現実感が追いついていないのかもしれない。
『氷の城壁』は、こうした認識のずれを物語の大きな駆動力にしてきた作品です。
美姫とヨータの告白も、一方が伝えればそれですべて解決する出来事としては描かれません。
第109話「はじまらない」|両想いでも恋人らしくなれない
第109話のタイトルは「はじまらない」です。
この題名は、美姫とヨータの関係を非常に端的に表しています。
告白はされた。
互いの気持ちも近づいた。
それなら恋愛は「始まった」はずです。
それでも、本人たちの感覚では簡単には始まりません。
昨日まで友達として接していた相手を、今日から急に「恋人」として見る。
文字にすれば簡単ですが、実際の関係では大きな変化です。
それまで自然にできていたことまで、恋人になった瞬間に意味を持ち始めます。
友達なら気にならなかった距離が近すぎるように感じる。
普通に話したいのに、意識してしまって話せない。
好きだから近づきたいのに、好きだからこそ失敗したくなくなる。
私は、この第109話があることで、美姫とヨータの恋が非常に現実的になったと感じます。
「両想い=即幸福」ではなく、関係に名前が付いた後にも、その名前へ心を追いつかせる時間が必要なのです。
第110話「箍」|ヨータが抑えてきた感情と向き合う
続く第110話は「箍」です。少年ジャンプ+でも正式な題名を確認できます。
ヨータは、美姫を長く好きだった人物です。
それだけを聞くと、「両想いになったのだから一番迷わないはず」と思えるかもしれません。
しかし、むしろ長い片思いだったからこその難しさがあります。
期待すると傷つく。
友達でいられるだけで十分だと考える。
自分の望みを小さくしておけば、今の関係は壊れない。
そうした考え方を長く続ければ、「美姫も自分を好き」という現実が訪れても、すぐには心が切り替わりません。
私は第110話のヨータを、単純に「照れている」とだけ読むより、長く自分の感情へかけていた制限を外そうとしている人物として見ると、より深く理解できると感じます。
「箍」という題名から連想されるのは、何かを締め、形を保つための枠です。
ヨータはそれまで、自分の恋心があふれないよう、自分なりの枠を作っていたのではないでしょうか。
それを外してよい状況になったからといって、人はすぐ自由に振る舞えるわけではありません。
長年身についた諦め方もまた、一種の習慣だからです。
ここが、美姫だけでなくヨータにも「変わる時間」が必要だった理由だと私は考えています。
美姫とヨータの恋愛が印象に残る理由とは?
美姫とヨータの関係は、表面的には「幼い頃から身近にいた男女が最終的に恋人になる」という王道の形にも見えます。
しかし、その中身はかなり慎重に組み立てられています。
最大のポイントは、ヨータの一途さを、美姫が恋愛で応えなければならない理由にしなかったことです。
一途な片思いは、物語の中では美しく見えます。
けれど、現実の人間関係として考えれば、どれほど長く好意を向けられても、相手が同じ気持ちになるとは限りません。
『氷の城壁』は、その当然のことを物語上でも大切にしています。
美姫は、ヨータが好きだと知ってすぐ交際しません。
いったん答えを出し、その後も二人は時間を過ごします。
その時間の中で、美姫自身の見方が変わっていく。
そして最後はヨータから再び強く迫られるのではなく、美姫から告白する。
私はここに、恋愛を「努力した人への報酬」として扱わない本作の慎重さを感じます。
同時に、この展開は美姫自身の成長としても重要です。
美姫は、人の期待を察することに長けています。
場の空気を壊さず、明るく振る舞い、人間関係を円滑にしようとする。
けれど、周囲へ合わせることが得意な人ほど、「自分が本当は何を望んでいるのか」を後回しにしてしまう場合があります。
その美姫が、ヨータとの関係では最後に自分から選ぶのです。
相手が喜ぶ答えではなく、自分の中に生まれた答えを、自分の言葉で渡す。
ここまでの美姫を見てきた読者にとっては、恋愛成就そのもの以上に大きな変化として映るのではないでしょうか。
一方、ヨータもまた変化しています。
ヨータの優しさは、大きな魅力です。
ただし、優しい人が常に自分の望みを率直に言えるとは限りません。
相手を困らせないために引く。
関係を壊さないために諦める。
自分さえ我慢すればいいと考える。
こうした態度もまた、「優しさ」とよく似た形をしています。
美姫と付き合うことは、ヨータにとって夢がかなうだけの出来事ではありません。
自分の望みを持ってもよいと認めることでもあります。
美姫は「人に合わせる自分」から一歩出る。
ヨータは「期待しない自分」から一歩出る。
この二人は性格が違うように見えながら、実は関係を壊さないために自分を抑えるという点で似ています。
だからこそ、恋人になるために必要だったのは、相手を変えることではありません。
まず自分の感情を正面から見ることだったのだと思います。

付き合った後の美姫とヨータはどうなる?14巻にもその後が描かれる
「付き合ったらそこで終わりなのか」という点が気になる方もいるでしょう。
美姫とヨータは、第13巻で恋人になった後も登場します。
原作最終14巻には第112話から第116話、そして最終話「解氷」が収録されています。
さらに集英社の単行本情報では、第116話の題名が「次の季節へ」であることに加え、巻末に読者リクエストによる「付き合った後の2人がもっとみたい」ヨータ&ミキのおまけが収録されていることも確認できます。
これは、美姫とヨータの関係が「告白成功」という一点だけで完結していないことを示しています。
第116話「次の季節へ」は少年ジャンプ+でも公開されている正式なエピソードです。
私がこの終盤で興味深いと思うのは、交際後の二人にも、それぞれ元々の性格が残っていることです。
恋人になったからといって、急に別人のように大胆になるわけではない。
長く友達だった二人らしい距離感を残しながら、少しずつ「友達ではなかった頃にはできなかったこと」が増えていく。
この変化は派手ではありません。
しかし『氷の城壁』という作品自体が、劇的な事件だけで人間関係を動かす物語ではありません。
小さな言葉。
視線。
言えなかった一言。
相手の反応を誤解した時間。
そうした細部の積み重ねで関係が変化します。
だから、美姫とヨータについても「付き合った瞬間」だけを見るより、「付き合える二人になるまで」と「付き合った二人がどう馴染んでいくか」を合わせて読むほうが、本作らしい味わいがあります。
アニメ『氷の城壁』では美姫とヨータはどこまで進んだ?第2期の注目点
アニメから『氷の城壁』を知った方にとっては、「美姫とヨータが付き合うところまでアニメ化されるのか」が気になるところでしょう。
TVアニメ第1期の最終回は第14話「爆弾」です。
公式サイトによると、第14話では体育祭後、陽太が小雪へ「美姫への恋心に決着をつけるため告白する」と決意を伝えます。一方、美姫も陽太が自分を好きなのではないかと思い悩む段階まで進みました。
つまり、第1期終了時点では、美姫とヨータはまだ原作13巻の「美姫からの告白」には到達していません。
物語としては、原作8巻付近の重要なすれ違いへ踏み込んだところです。
そして2026年9月18日現在、TVアニメ第2期は2026年10月1日から毎週木曜23時56分、TBS系28局で全国同時放送されることが公式に発表されています。
Netflixでは10月2日から先行配信が始まり、Prime Video、Disney+、U-NEXTなどでは10月9日から順次配信予定です。
主要キャストは、美姫役が和泉風花さん、陽太役が猪股慧士さん、小雪役が永瀬アンナさん、湊役が千葉翔也さんです。第2期もスタジオKAIがアニメーション制作を担当します。
さらに第2期のオープニングテーマはTHE BEAT GARDEN「エスコート」、エンディングテーマはSuperfly「花蔭」と発表されています。
ただし、第2期が原作の何話まで映像化するのかについては、現時点で最終到達話まで公式に明示されているわけではありません。
したがって、「第2期で必ず107話の告白まで行く」と断定するのは避けるべきでしょう。
注目したいのは、むしろその途中です。
第1期最終回の段階でヨータは、自分の片思いを終わらせるつもりで動き始めています。
ここから先、美姫がどのようにヨータの言葉を受け止めるのか。
一度変化した二人の距離がどう落ち着くのか。
その後、美姫の側にどのような感情が育っていくのか。
原作を知っている立場から見ると、ここからの「いったん離れて、もう一度相手を見る」という時間こそ重要です。
アニメでは漫画と異なり、ページをめくる速度を視聴者自身では決められません。
その代わり、声の間、呼吸、視線、沈黙の長さ、人物同士の立ち位置などが感情を伝える材料になります。
美姫とヨータは、大声で気持ちをぶつけ合う場面以上に、「普段と少し違う反応」が意味を持つ二人です。
校正者として普段から言葉の置かれ方を気にしている私としては、台詞だけでなく、言葉を発する直前と直後の沈黙にも注目したいと思います。
『氷の城壁』は、「何を言ったのか」だけでなく、「なぜその言葉をすぐ言えなかったのか」が人物像を作る作品だからです。
考察|美姫とヨータは「好きになる物語」より「自分の好きに責任を持つ物語」
ここからは、作品の描写を踏まえた私自身の考察です。
私は、美姫とヨータの恋愛で最も印象に残るのは、二人が両想いになった事実そのものではありません。
自分の感情を、自分のものとして引き受けられるようになるまでの過程です。
ヨータは比較的早い段階から、美姫への恋心を自覚しています。
しかし、自覚しているからといって、その気持ちをいつでも自由に表現できるわけではありません。
好意を伝えれば、今の関係が壊れるかもしれない。
相手が困るかもしれない。
断られた後、今までのように友達ではいられないかもしれない。
片思いには、「伝えたい」と「失いたくない」が同時に存在します。
ヨータはその間で揺れます。
そして一度結果を受け止めた後は、自分なりに気持ちへ区切りを付けようとします。
一方、美姫は別の方向から難しさを抱えています。
ヨータはあまりにも身近です。
最初から大事な存在だからこそ、「大事=恋」とは簡単に言えません。
ここが、私は非常に現実的だと感じます。
恋愛感情というものは、常に友情と明確に区別できるわけではありません。
会いたい。
一緒にいると安心する。
自分のことを分かってほしい。
別の誰かと親しくしていると少し気になる。
こうした気持ちは、友情にも恋愛にも現れます。
特に長い付き合いの相手であれば、「いつから恋だったのか」と後から振り返っても、本人さえ正確に答えられない場合があります。
美姫に起きているのは、まさにそうした境界の揺れではないでしょうか。
だから彼女の恋は、「ある日突然好きになった」というより、「ずっと大切だった相手への気持ちを、恋として認められるようになった」と読むほうがしっくりきます。
ここで第107話の意味が改めて大きくなります。
美姫は、誰かに「それは恋だ」と決めてもらうのではありません。
ヨータが長年好きだったから責任を感じて付き合うのでもありません。
自分で考えた末に、自分から伝えます。
私は、この「自分から」という一点が、美姫という人物の成長を最もよく象徴していると思います。
美姫は周囲の感情に敏感です。
人を傷つけないように考える。
雰囲気を壊さないように動く。
それは優しさでもありますが、常に相手を優先すれば、自分の本音がどこにあるのか見失う危険もあります。
そんな美姫が最後には、「相手が私に何を望んでいるか」ではなく、「私はこの人をどう思っているか」を基準に動く。
恋愛の成立と同時に、自分の意志を言葉にする人物へ変化しているのです。
ヨータにも同じくらい重要な変化があります。
彼は相手を尊重することのできる人です。
ただ、相手を尊重することと、自分の願いを消してしまうことは同じではありません。
ヨータは優しいからこそ、自分が引けば収まる場面では引くことができます。
しかし恋人になるとは、「相手に迷惑をかけないように存在する」関係ではありません。
自分も何かを望み、その望みを言葉にし、相手と調整していく必要があります。
美姫から好意を返された後にヨータが戸惑うのは、そう考えると非常に自然です。
長く片思いをしてきた人にとって、両想いとは単なるゴールではありません。
「諦めることで保ってきた自分」を変えなければならない出来事でもあります。
ここに、美姫とヨータの共通点が見えてきます。
美姫は、人へ合わせることで関係を守る。
ヨータは、自分が引くことで関係を守る。
方法は異なりますが、二人とも人間関係を壊さないために自分の感情を抑えやすい人物です。
だから、二人が本当に恋人になるためには、「好き」と言われるだけでは足りません。
美姫は自分の感情を自分で選ぶ必要がある。
ヨータは自分の感情を受け入れ、望んでもよいと認める必要がある。
その二つがそろうのが、第107話から第110話なのだと私は考えています。
そして、ここに本作の題名『氷の城壁』とも響き合うものを感じます。
人は、自分を守るために心の周囲へ壁を作ります。
小雪だけが壁を持っているわけではありません。
明るく人付き合いの上手な美姫にも、穏やかなヨータにも、それぞれ違う形の壁がある。
美姫の壁は「相手が望む自分でいようとすること」。
ヨータの壁は「期待しすぎないことで傷つかないようにすること」。
そう考えると、美姫とヨータの恋は、友達だった二人が恋人になっただけの物語ではなく、互いを大切にするあまり隠してきた自分自身を、少しずつ相手へ見せられるようになる物語として読めます。
私はそこに、大人になってから読み返しても残る味わいがあると感じます。
若い頃の恋愛作品では、「誰と誰が結ばれるのか」が強く気になるものです。
けれど年齢を重ねて読むと、「結ばれるまでに、その人が自分のどんな癖と向き合ったのか」という部分も見えてきます。
美姫とヨータはまさに、その読み方に耐える二人です。
短い「好き」という言葉へたどり着くまでに、二人とも長い時間を使いました。
けれど、その遠回りがあったからこそ、107話の告白は単なる答え合わせではありません。
「私は私の気持ちとして、あなたが好きです」と美姫が選び直した瞬間になる。
そしてヨータにとっては、「好きでいてもいい」「相手から好きだと言われる自分を受け入れていい」と、自分の心を開き直す始まりになります。
第109話の題名が「はじまらない」でありながら、実際にはそこから二人の新しい関係が始まっていく。
この少し逆説的な構造も、私は非常に『氷の城壁』らしいと思います。
恋人という肩書きが先に決まっても、心は少し遅れて追いつく。
人間関係とは、本来そのくらい不器用なものなのかもしれません。
まとめ|美姫の告白は107話、ヨータとの交際は109〜110話で形になる
『氷の城壁』の安曇美姫と日野陽太(ヨータ)は、最終的に両想いとなり、恋人同士になります。
二人の関係を時系列で見ると、第8巻でヨータの恋心が大きく表面化し、美姫もその好意へ向き合います。
しかし、その時点では恋人にはなりません。
いったん友達として時間を重ね、美姫自身の中でヨータへの感情が変化した後、原作13巻の第107話「週末 sideA」で、今度は美姫から想いを伝えます。
そして第109話「はじまらない」、第110話「箍」を通じて、二人は「両想いであること」と「恋人としてどう向き合うか」を改めて受け止めていきます。
そのため「美姫とヨータは何話で付き合う?」と聞かれた場合は、告白は107話、交際が確かな形になるのは109〜110話の一連の展開と覚えておくと分かりやすいでしょう。
さらに最終14巻には第116話「次の季節へ」や、ヨータ&ミキの「付き合った後」を扱う描き下ろしも収録されています。
ただ、二人の本当の魅力は「何話で付き合ったか」という数字だけではありません。
ヨータが長く好きだったことも、美姫がすぐ答えを返さなかったことも、どちらかが間違っていたわけではありません。
それぞれに必要な時間を過ごし、相手に合わせた答えではなく、自分自身の感情として「好き」を選べる地点まで進んだ。
私は、その遠回りを省略しなかったことこそ、美姫とヨータの恋が印象に残る最大の理由だと考えています。
よくある質問
『氷の城壁』で美姫とヨータは最終的に付き合う?
はい。安曇美姫と日野陽太(ヨータ)は最終的に両想いとなり、恋人同士になります。
美姫が告白する展開は原作13巻に収録され、14巻では付き合った後の二人についても描かれています。
美姫とヨータが付き合うのは何話?
大きな転換点は第107話から第110話です。
第107話「週末 sideA」で美姫がヨータへ想いを伝え、その後の第109話「はじまらない」と第110話「箍」で、二人が新しい関係へ向き合っていきます。
一話だけで答えるより、「107話で告白、109〜110話で恋人として関係が形になる」と理解すると分かりやすいでしょう。
ヨータの美姫への告白は何巻?
ヨータの恋心と美姫の認識が大きく動くのは原作8巻です。
第8巻には第67話から第74話までが収録され、第71話「結び」も含まれています。公式の巻紹介でも、美姫がヨータの好意について思い悩み、ヨータが気持ちを伝えようとする流れが示されています。
美姫からヨータへ告白するのは何巻?
原作13巻です。
第13巻には第105話から第111話が収録され、美姫からヨータへの告白は第107話「週末 sideA」で描かれます。
付き合った後の美姫とヨータも描かれる?
描かれます。
最終14巻には第116話「次の季節へ」などの本編に加え、「付き合った後の2人がもっとみたい」という読者リクエストによるヨータ&ミキの描き下ろしも収録されています。
アニメ第2期はいつから放送される?
2026年9月18日現在、TVアニメ『氷の城壁』第2期は2026年10月1日から毎週木曜23時56分、TBS系28局で全国同時放送予定です。
Netflixでは10月2日から先行配信が始まり、そのほかの主要配信サービスでも順次配信されます。
第1期最終回の第14話「爆弾」は、陽太が美姫への恋心に決着をつけようと動き始める重要な地点で終わりました。第2期では、その後の二人の距離がどのように映像化されるのかが大きな注目点です。
執筆:篠原千鶴(アニメ愛好家・フリーランス校正者)

