『攻殻機動隊』の歴代OP・ED・主題歌は、2026年版のKing Gnu「GO GHOST」、MILLENNIUM PARADE「Blue」まで30年以上にわたり更新されてきました。この記事では1995年版から最新TVアニメまで、曲の種別と使用版を分けて年代順に整理します。
映画では「OP」「ED」という呼び方をしない場合もあるため、正式な主題歌に加え、作品の冒頭・終幕を象徴する楽曲は「冒頭曲」「エンドクレジット曲」と明記しました。S.A.C.の地上波版、1995年版の海外向けエンディング、劇場再編集版など、混同しやすい版違いも可能な範囲で区別しています。
『攻殻機動隊』歴代OP・ED・主題歌は?使用版まで分けて一覧化
まず、この記事で扱う範囲を明確にしておきます。
対象は、1995年以降に制作された主要アニメーション作品で、OP・ED・主題歌・エンドクレジット曲として確認できる楽曲です。劇中で重要なボーカル曲であっても、正式なOP・ED・主題歌でないものは一覧の中心から外し、本文で補足します。
また、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man』『Individual Eleven』のようなTVシリーズ再編集作品は、原則として元シリーズと重複するため独立した新曲一覧には数えません。一方、『SAC_2045 持続可能戦争』『最後の人間』のように公式が劇場版の「主題歌」として楽曲を明示している場合は掲載します。
年 作品 種別・使用版 曲名 アーティスト・担当
1995 『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』 冒頭曲 謡I -Making of Cyborg 川井憲次
1995 同作 日本オリジナル版エンドクレジット 謡III -Reincarnation 川井憲次
1995 同作 英語版などのエンドクレジット One Minute Warning Passengers
2002 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 OP・初期放送系 inner universe ORIGA
2002 同作 ED・初期放送系 lithium flower Scott Matthew
2004 同作 地上波版OP GET9 jillmax
2004 同作 地上波版ED i do Ilaria Graziano
2004 『イノセンス』 主題歌 Follow Me 伊藤君子
2004 『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』 OP rise ORIGA
2004 同作 ED living inside the shell Steve Conte
2005 同作 地上波版OP CHRisTmas in the SiLenT ForeSt Ilaria Graziano
2005 同作 地上波版ED from the roof top~somewhere in the silence [sniper’s theme] Ilaria Graziano
2006 『攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society』 OP player ORIGA with Heartsdales
2006 同作 ED date of rebirth ORIGA
2013 『攻殻機動隊 ARISE』border:1 OP GHOST IN THE SHELL ARISE コーネリアス
2013 同作 border:1 ED じぶんがいない salyu × salyu
2013 同作 border:2 ED 外は戦場だよ 青葉市子 コーネリアス
2014 同作 border:3 ED Heart Grenade ショーン・レノン コーネリアス
2014 同作 border:4 ED Split Spirit 高橋幸宏 & METAFIVE
2015 『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』 OP あなたを保つもの 坂本真綾 コーネリアス
2015 『攻殻機動隊 新劇場版』 主題歌 まだうごく 坂本真綾 コーネリアス
2020 『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1 OP Fly with me millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045
2020 同作 ED sustain++; Mili
2021 『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』 主題歌 Fly with me millennium parade
2022 『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2 OP Secret Ceremony millennium parade
2022 同作 ED No Time to Cast Anchor millennium parade
2023 『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』 主題歌 Secret Ceremony millennium parade
2023 同作 主題歌 No Time to Cast Anchor millennium parade
2026 『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』 OP GO GHOST King Gnu
2026 同作 ED Blue MILLENNIUM PARADE feat. Saya Gray, Daniel Caesar
S.A.C.関連は放送形態によって主題歌が変わるため、「inner universeだけが初代OP」と覚えている方と「GET9がOPだった」と記憶している方の双方がいて不思議ではありません。
Production I.Gの商品情報では「GET9」が『STAND ALONE COMPLEX』のオープニングテーマ、「rise」が『2nd GIG』のオープニングテーマとして整理されています。また『Solid State Society』の公式商品情報では「from the roof top~somewhere in the silence [sniper’s theme]」が『2nd GIG』エンディングテーマと明記されています。
さらに、フライングドッグが2021年1月20日に発売した『攻殻機動隊 superb music high resolution』には、1995年版、『イノセンス』、S.A.C.、ARISEの主題歌・挿入歌50曲が収録されています。したがって「攻殻機動隊の歌は全部で30曲前後」といった単純な数え方はできません。
ここが一覧記事として大切な点です。
OP・EDの本数と、シリーズに存在するボーカル曲の総数は別物です。劇中歌や挿入歌まで含めると世界は急に広がるため、何を数えているのかを分けて考える必要があります。
1995年版と『イノセンス』の音楽はなぜ今も強烈なのか?
1995年の押井守監督『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で、川井憲次は未来社会を単純な電子音で描きませんでした。
冒頭の「謡I -Making of Cyborg」では、義体が機械的な工程によって組み上げられていく映像に、集団の人声を中心とした重い響きが置かれます。
この曲の特徴を耳で追うと、現代的なポップスのように拍を強く刻んで前へ進むというより、声の持続、打楽器の間、低い響きが空間そのものを広げる作りになっています。
画面では身体が工業製品のように作られていく一方、耳へ届くのは極めて身体性の強い声です。
私は、この「映像と音が同じ説明をしない」ことこそ、1995年版の音楽が古びにくい理由だと考えています。
未来都市だから電子音を使う、サイボーグだから無機質にする、という分かりやすい記号を選ばない。むしろ機械の映像へ人間の声を置くことで、観客の意識に「では人間とはどこにあるのか」という小さな違和感を残します。
日本オリジナル版の終幕では「謡III -Reincarnation」が用いられる一方、英語版ではPassengersの「One Minute Warning」がエンドクレジット曲として使用された版があります。版によって「攻殻の終わりの音」が異なる点は、歴代曲を調べる際に特に混乱しやすい部分です。
2008年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0』では、川井憲次による音楽も2.0版として再構築され、2008年12月17日発売のサウンドトラックには「謡I – Making of Cyborg(2.0 Ver.)」「謡III – Reincarnation(2.0 Ver.)」などが収録されました。
新しい主題歌へ置き換えた作品ではなく、既存の音楽世界を音響面から再提示した作品と考えるほうが正確でしょう。
そして2004年の『イノセンス』では、再び川井憲次が音楽を担当します。
正式な主題歌は伊藤君子の「Follow Me」。Production I.Gの公式商品情報では、同じシングルに挿入歌「River Of Crystals」が収録され、サウンドトラックには「傀儡謡 怨恨みて散る」「傀儡謡 新世に神集ひて」「傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと」などが並びます。

『イノセンス』で注目したいのは、主題歌一曲だけでは作品の音楽像を捉えきれない点です。
「傀儡謡」では人声が大きな塊として響き、「River of Crystals」「Follow Me」では一人の歌声へ焦点が移ります。集団の声から個の声へ移動する音響設計として聴くと、人形、複製、身体、個人という作品の問題意識がより鮮明になります。
音楽的にも、1995年版と『イノセンス』は「速さ」で未来を表す作品ではありません。
残響を長く取り、空白を恐れず、音が消えた後の時間まで画面の一部として扱っている。その静けさがあるからこそ、突然現れる打撃音や声の層が強く感じられます。
校正の仕事では、一文字があることだけでなく「ないこと」にも意味を見ます。
それと似て、川井憲次による攻殻の音楽では、鳴っている音だけでなく、次の音までの余白に耳を向けると作品の呼吸が見えてくるように感じます。
S.A.C.のOP「inner universe」「rise」と地上波版は何が違う?
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の音楽を語るうえで欠かせないのが、菅野よう子です。
第1シリーズではORIGA「inner universe」とScott Matthew「lithium flower」が代表的なOP・EDとして知られていますが、地上波版ではjillmax「GET9」、Ilaria Graziano「i do」が使用されました。
ここを一つの「歴代OP」欄へ読点で並べてしまうと、どの曲がどの版なのかが分からなくなります。
今回あえて表を一曲一行にしたのは、その誤解を避けるためです。
菅野よう子期のもう一つの特徴は、歌声の国籍や言語、音楽ジャンルを一つに固定しなかったことです。
『STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』には「inner universe」「lithium flower」に加え、Ilaria Graziano、Gabriela Robinらによる多数のボーカル曲が収録され、続くO.S.T.2には「rise」「GET9」「living inside the shell」「i do」などが並びます。
「inner universe」を耳で追うと、電子的な反復の上に歌声が浮遊し、一方だけが背景へ退くのではなく、人声と機械的なリズムがほぼ同じ強度で存在しています。
対して「GET9」は、より直接的なビートと輪郭の明確な歌唱によって、短時間で視聴者を物語へ引き込む力が強い曲です。
同じ作品でもOPを替えると、「電脳都市へ入っていく感触」が変わります。
「inner universe」が広いネットワーク空間へ徐々に接続される感覚だとすれば、「GET9」は公安9課の活動する現場へ身体ごと放り込まれる感覚に近い。これは私個人の聴感ですが、版ごとの印象差を考える一つの手掛かりになるでしょう。
『S.A.C. 2nd GIG』ではORIGA「rise」とSteve Conte「living inside the shell」が代表的なOP・EDです。
地上波版ではIlaria Grazianoによる「CHRisTmas in the SiLenT ForeSt」と、「from the roof top~somewhere in the silence [sniper’s theme]」が使われました。「Snyper」と紹介されることもありますが、公式サウンドトラックの商品情報では後者の長いタイトルで掲載されています。
そして2006年の『Solid State Society』では、OPがORIGA with Heartsdales「player」、EDがORIGA「date of rebirth」です。
Production I.Gの公式商品ページでは、2006年11月22日発売のサウンドトラックに「player」をオープニングテーマ、「date of rebirth」をエンディングテーマとして明記しています。
S.A.C.期を音楽的にまとめるなら、私は「多様性」という言葉だけでは少し足りないと感じます。
重要なのは、異なる音を並べるだけでなく、リズムによって同じ都市の時間へ同期させていることです。
ロック、電子音、アンビエント的な質感、多言語の歌声は、本来なら別々の場所に属していてもおかしくありません。しかし一定のパルスや反復がそれらを結びつけるため、アルバム全体が巨大な都市の異なる地区を歩いているように聞こえます。
公安9課のメンバーも、それぞれ異なる身体と経歴を持ちながら、一つの事件へ同期して動きます。
その意味でS.A.C.の音楽は、「個人と集合」というテーマを歌詞だけでなく、アンサンブルそのものの構造で表現していたのではないでしょうか。
ARISEからSAC_2045へ、声とリズムはどう変化した?
『攻殻機動隊 ARISE』では、音楽担当がコーネリアスへ交代しました。
OP「GHOST IN THE SHELL ARISE」を共通の入口とし、border:1はsalyu × salyu「じぶんがいない」、border:2は青葉市子 コーネリアス「外は戦場だよ」、border:3はショーン・レノン コーネリアス「Heart Grenade」、border:4は高橋幸宏 & METAFIVE「Split Spirit」と、各章でEDが変化します。
フライングドッグの公式映像作品紹介でも、この4曲が各borderのEDとして整理されています。
ここで耳を引くのは、川井憲次の大きな残響や菅野よう子の厚いジャンル混交とは違い、音を細かな部品として扱う感覚です。
攻殻機動隊グローバルサイトが2025年に掲載した小山田圭吾のインタビューでは、salyu × salyuについて声を細かく切ったり多重的に使ったりする試みが「擬態」の表現に合うと考えたことが語られています。border:2では、青葉市子の歌声が作品の暗い世界観に合うと判断した経緯も明かされました。
「声を加工する」という方法は電子音楽では珍しくありません。
しかし『攻殻機動隊』では、それが特別な意味を持ちます。
声を切断しても、その人物の声だと感じられるのか。複数に重ねても「一人」の声なのか。加工されても同一性は残るのか。
私は、ARISE期の面白さは、作品が身体に対して行ってきた問いを、音楽が声に対して行っているところにあると思います。
2015年のTV版『ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』では坂本真綾 コーネリアス「あなたを保つもの」がOPとなり、同年公開の『攻殻機動隊 新劇場版』では「まだうごく」が主題歌になりました。
両曲は坂本慎太郎が作詞、小山田圭吾が作曲・編曲を担当しています。フライングドッグの坂本真綾20周年特設ページでも、2015年6月17日発売のシングル収録曲として両作品とのタイアップが明記されています。
2020年からの『攻殻機動隊 SAC_2045』では、再び音の方向が変わります。
シーズン1のOPは「Fly with me」、EDはMili「sustain++;」。劇伴は戸田信子と陣内一真が担当しました。公式スタッフ情報でもこの組み合わせが確認できます。
シーズン2ではOP「Secret Ceremony」、ED「No Time to Cast Anchor」をともにmillennium paradeが担当。両曲を収録したシングルは2022年6月1日に発売され、作詞はermhoi、作曲はDaiki Tsunetaです。
また、シーズン1を再構成した2021年の劇場版『SAC_2045 持続可能戦争』では「Fly with me」が主題歌として改めて位置づけられました。
シーズン2を再構成した2023年の『SAC_2045 最後の人間』では、「Secret Ceremony」「No Time to Cast Anchor」の2曲が正式に主題歌とされています。

ARISEとSAC_2045を続けて聴くと、同じ電子的な要素を使っていても設計思想が異なることが分かります。
ARISEでは、短い音、加工された声、細かな配置によって余白そのものをデザインする傾向が目立ちます。
一方「Fly with me」以降のmillennium paradeでは、複数の声、ドラム、低音、管楽器や電子音が一つの曲の内部で重なり、音圧と推進力を作ります。
つまり、ARISEが「分解して見る音」だとすれば、SAC_2045は「接続して走らせる音」と捉えることができます。
どちらもネットワーク社会を扱いながら、片方は一個人を構成する断片へ寄り、もう片方は多数の個人がつながったときの速度へ寄っている。この差は、歴代曲を年代順に聴いたときに見つけやすい変化です。
2026年版『攻殻機動隊』OP「GO GHOST」・ED「Blue」の担当は?
2026年版『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』では、OPがKing Gnu「GO GHOST」、EDがMILLENNIUM PARADE feat. Saya Gray, Daniel Caesar「Blue」です。
作品は2026年7月7日からカンテレ・フジテレビ系全国ネット「火アニバル!!」枠で放送を開始しました。2026年9月4日時点では放送中です。
「GO GHOST」は2026年7月29日に配信開始。
公開クレジットでは、作詞・作曲が常田大希、編曲がKing Gnuです。作曲者と編曲名義を同一人物として扱わないことは、音楽記事では大切な確認点でしょう。
一方、「Blue」にはSaya GrayとDaniel Caesarがフィーチャリングアーティストとして参加しています。
2026年6月11日の公式発表では、約3年前に常田大希とSaya Grayが制作を始め、その後Daniel Caesarが参加して完成した経緯が説明されました。
さらに注目したいのは、King GnuとMILLENNIUM PARADEが、同一作品のOP・EDを同時に担当するのが初の試みだと公式に発表されていることです。
同じ常田大希を中心に持ちながら、入口と出口で異なるプロジェクト名義を使う。
これは単なる話題性だけでなく、音の人格を変える仕組みとして興味深く感じます。
King Gnuはバンドという輪郭を強く持ち、編曲もKing Gnu名義です。対してMILLENNIUM PARADEは、国外のアーティストも含む可変的な共同制作へ開かれています。
同じ作り手を中心に置いても、誰と接続するかによって「同じ曲作者の音楽」は別の人格になる。
これは私見ですが、「身体や環境が変わっても同じ自己と言えるか」という『攻殻機動隊』の長年の問いと、実によく響き合う配置だと思います。
2026年版では劇伴も一人の作曲家だけによる体制ではありません。
公式発表では岩崎太整が音楽監督・音楽を担当し、小西遼、YUKI KANESAKAとともに3名で制作しています。
オリジナルサウンドトラックは2026年9月9日発売予定の2枚組CDで、DISC 1が19曲、DISC 2が27曲、合計46曲です。アナログ盤は9月30日発売予定とされています。
2026年9月4日の時点ではサウンドトラック発売前ですから、アルバム全体を聴いた評価を断定することはできません。
ただし、主題歌だけで最新作の音楽を判断するのは早いでしょう。
1995年版から一貫して、『攻殻機動隊』は劇伴が都市の湿度、身体の重さ、情報空間の距離感を担ってきました。46曲の全貌が公開された後には、「GO GHOST」「Blue」と本編の劇伴がどのように役割分担しているかまで確認することで、2026年版の音楽像がより正確に見えてくるはずです。
考察|なぜ『攻殻機動隊』は音楽家が変わっても「攻殻らしい」のか?
歴代OP・ED・主題歌を年代順に追うと、音楽ジャンルそのものには驚くほど統一性がありません。
川井憲次、菅野よう子、コーネリアス、戸田信子・陣内一真、millennium parade、そして2026年版の岩崎太整・小西遼・YUKI KANESAKA。
同じシリーズとは思えないほど、リズム、声の使い方、編成、音響空間が変化しています。
それでも『攻殻機動隊』らしく聞こえるのはなぜでしょうか。
私は、従来の記事でよく語られてきた「人間と機械の境界」だけではなく、各時代の音楽が「何と何を同時に存在させるか」を更新してきたからだと考えています。
1995年版では、ゆっくりとした空間の中で、人の声と工業的な身体の映像が同居します。
S.A.C.では、多言語、多ジャンル、多数の歌手を、強いリズムと反復によって一つの都市へまとめます。
ARISEでは、一つの声を切り、重ね、加工し、「一つだったもの」の輪郭そのものを揺らします。
SAC_2045では、多くの演奏要素を一曲の内部へ集約し、接続された集団が生み出す推進力を前面へ出しました。
2026年版では、OPとEDの中心に常田大希という共通項を持ちながら、King GnuとMILLENNIUM PARADEという異なる共同体を使い分け、劇伴側も3名の音楽家による制作体制を採っています。
つまり、攻殻音楽の歴史を「民族音楽から電子音楽へ」といったジャンルの変遷だけで説明することはできません。
変わり続けているのは、音同士の関係性なのだと思います。
一人の声と多数の声。
静寂と情報量。
生楽器と電子処理。
個人の作曲と共同制作。
こうした要素の距離をどう設計するかが、その時代ごとの『攻殻機動隊』になっています。
もう一つ、今回あらためて歴代OP・EDを使用版まで分けて見直して気づくのは、「攻殻機動隊には唯一の正しい入口曲がない」という点です。
S.A.C.だけを見ても、「inner universe」で作品へ入った視聴者と、「GET9」で入った視聴者では、最初に受けた速度感が違います。
1995年版ですら、日本オリジナル版と海外向けの版ではエンドクレジット曲が異なる例があります。
これは長寿シリーズでは珍しい弱点ではなく、むしろ面白さです。
同じ物語世界でも、どの媒体、どの時代、どの地域から入ったかによって「自分にとっての攻殻の音」が変わる。
ネットワーク上に一つだけの中心がないように、シリーズの音楽史にも一つだけの中心曲はありません。
そのため、初めて歴代曲を聴く方には「人気曲だけのプレイリスト」より、OPとEDを作品ごとに対で聴く方法をおすすめしたいところです。
「inner universe」と「lithium flower」。
「rise」と「living inside the shell」。
「player」と「date of rebirth」。
「Secret Ceremony」と「No Time to Cast Anchor」。
「GO GHOST」と「Blue」。
OPでは視聴者をどの速度で作品世界へ入れ、EDではどれほどの距離を取って現実へ返すのか。
入口と出口を一組として聴くと、単曲の人気とは別の「作品設計としての音楽」が見えてきます。
これはアニメを長く見てきた立場から、私が『攻殻機動隊』の音楽を聴き直す際に特に大切にしている視点です。
1995年から2026年までには31年の時間があります。
その間に現実の社会でも、インターネットへの常時接続、スマートフォン、SNS、生成AIなど、人間と情報の関係は大きく変化しました。
だからこそ、最新の『攻殻機動隊』が1995年の音をそのまま再現しても、現在の私たちにとっての「未来」にはならないのでしょう。
作品が同じ問いを投げ続けるためには、答えではなく問い方の音を更新し続けなければならない。
私は、その更新の積み重ねこそが、『攻殻機動隊』の主題歌を30年以上聴き継ぐ価値だと考えています。
まとめ|『攻殻機動隊』歴代主題歌は30年以上の音楽史そのもの
『攻殻機動隊』の歴代OP・ED・主題歌は、1995年版の川井憲次「謡I -Making of Cyborg」「謡III -Reincarnation」から、S.A.C.のORIGA「inner universe」「rise」、ARISEのコーネリアス、SAC_2045のmillennium paradeを経て、2026年版のKing Gnu「GO GHOST」とMILLENNIUM PARADE「Blue」まで続いています。
特に注意したいのは、S.A.C.には地上波版などによる主題歌の違いがあり、1995年版にも日本オリジナル版と英語版のエンドクレジット曲の違いがあることです。
また、主題歌だけでなく挿入歌まで含めれば、その数はさらに増えます。2021年発売の公式音楽集だけでも、1995年版からARISEまでの主題歌・挿入歌50曲が収録されていました。
歴代曲を聴き直す際は、「好きな曲はどれか」だけでなく、テンポ、声の処理、楽器の数、残響、OPとEDの温度差にも耳を向けてみてください。
そこには、作品ごとに異なる音楽家が、その時代にとっての「人間」「身体」「ネットワーク」をどう聞いていたのかが残されています。
よくある質問
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のOPが「inner universe」と「GET9」の2曲あるのはなぜですか?
放送形態によって使用曲が異なるためです。
「inner universe」はシリーズを代表するOPですが、地上波版では「GET9」がOPとして使用されました。EDも同様に「lithium flower」と、地上波版の「i do」があります。
そのため、歴代曲を一覧化する場合は曲名だけでなく使用版まで確認することが重要です。
1995年版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のEDは「謡III」と「One Minute Warning」のどちらですか?
日本オリジナル版では「謡III -Reincarnation」が終幕を担いますが、英語版などではPassengers「One Minute Warning」がエンドクレジットに使用された版があります。
どちらか一曲だけを「世界共通のED」と断定すると、版違いを取りこぼすことになります。
初めて『攻殻機動隊』の音楽を聴くなら、どの曲からがおすすめですか?
シリーズの変化を知りたいなら、「謡I -Making of Cyborg」→「inner universe」→「rise」→「GHOST IN THE SHELL ARISE」→「Fly with me」→「GO GHOST」の順で聴くと、1995年から2026年までの音の変化をつかみやすいでしょう。
その後、それぞれのEDまで対で聴くと、作品ごとの入口と出口の設計を比較できます。
2026年版『攻殻機動隊』のOP・ED・劇伴担当は誰ですか?
OPはKing Gnu「GO GHOST」、EDはMILLENNIUM PARADE feat. Saya Gray, Daniel Caesar「Blue」です。
「GO GHOST」は常田大希が作詞・作曲し、編曲はKing Gnu。劇伴は音楽監督・音楽の岩崎太整と、小西遼、YUKI KANESAKAによる3名体制です。オリジナルサウンドトラックは2026年9月9日に発売予定です。
主な確認資料
本記事では、Production I.Gの各作品・商品情報、フライングドッグの商品ページ、『攻殻機動隊』公式グローバルサイト、TVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』公式サイト、『攻殻機動隊 SAC_2045』公式サイトを中心に、曲名、タイアップ区分、発売日、音楽担当を照合しました。
ARISE期の音楽制作については『攻殻機動隊』公式グローバルサイト掲載の小山田圭吾インタビュー、2026年版については2026年6月11日、7月5日、7月8日、7月14日の公式発表を確認しています。
執筆:篠原千鶴(アニメ愛好家・フリーランス校正者)

